見つけた。
芝生の上、寝転んでる。
木陰だから、そんなに暑くはないのかな。
漂う空気も、日本にいるよりリラックスしてるみたいで、私もなんとなく嬉しい。
楽しそうね?
私だって、とっても楽しい。
ゆっくり近づいて隣に腰を下ろす。
まずは服が触れるくらい。
目を閉じている彼に、これからどうやって手を出そうか少し考えを巡らせてみる。
手に触れて、ゆるく指を絡めてみようかな。
前髪、掻き分けて…おでこにちゅー、しようかな。
めくれたシャツの裾からのぞく素肌に、こっそり痕、残してみようかな。
…選択肢、いっぱいあって…ドキドキする。
そんなふうに少し様子をうかがってたら、閉じられていた目の片方が開いた。
あ…起きちゃった。
「いらっしゃい」
「うん、お待たせしました」
私の言葉を聞いたあと、ちょっと暑いね、と呟きながら身体を起こそうとしたから、慌てて制止する。
「ん?」
「もうちょっとこうしててね」
もう一度身体を横たえてくれた彼の隣に寝転び、その胸元に自分の頭をそーっと乗せてみた。
ややあって、直に触れた部分に、じんわりと汗がにじむ。
ひとりで寝転がっている彼を見たときは、まるで映画か、
それともポートレートか何かのようで現実味がなかったけれど、
こうしていると、やっぱりこれは現実で、同じ世界で生きてるって思える。
目を閉じると同時に、彼の手が私の頭を優しく撫でた。
私が起こしたアクションに応えてくれてるみたい。
言葉を通さない身体同士の会話のようで…
それが簡単に通じる関係であることに、あらたまって感動したりして。
暑くたってなんだって、この人とのこんなコミュニケーションがないと私、きっと干からびちゃう。
服が触れるくらいのところから始まって素肌同士が互いの体温を伝えあう。
季節を問わない私たちの距離感だけど、でもちゃんと季節は感じるのよね。
今なら…私たちを包む、ゆるくあたたかい空気の中で、
少し暑いくらいの密着具合がすごくリアル。一緒に夏のなかにいるんだなぁって教えてくれる。
ね、このあとどうする?
「移動しようか」
「どこに?」
耳をくっつけていたから、いつもより身体に響く声。
ほぼ同時に身体を起こすと、彼の唇が私のそれに素早く触れた。
「ふたりきりになれるところ、かな」
離れていく唇が優しく紡ぐ楽しそうな囁きで、
私の身体が少しずつ「そんな」モードに切り替わっていくのがわかる。
だからキスが短いことを、少しだけガッカリしたりして。
「俺のこと、好き?」
もうちょっとキスしてたいな、なんて思ってたら、彼がそう言って可愛く笑った。
久しぶりに聞くそのセリフとその表情が、ダメ押しみたいに私を揺さぶる。
あぁ…どうしよう。こんなに明るくて、例えばぶらぶら街を歩いたり、ショッピングしたり食事をしたり、
そんな楽しみ方がふさわしいような感じなのに、このままキスの続きに進みたくなる。
周囲を気にしないで、キスに…この人に没頭していたい。
けど、あえてそんな風に感じるようにもっていかれた気もする、から、それもちょっぴり悔しくて、
せめてもの仕返しに私の方から短くキスをしてみた。きっと仕返しにはならないと…思うけれど。
少しだけ繰り返すキスのなかで、さっきの問いかけに対して心の中でこっそり返事を返す。
俺のこと好き?って聞いたわよね?
もちろん、好きよ…大好き。
ねえ…私のことは?
好き?それとも…大好き?
2018.12.15 OUT