ぴかぴか -KYOKO

From -LOVERS

また買っちゃった。
並べてみるとカラフルなパッケージのチューブが色とりどり。
リップクリームにハンドクリームに…ボディクリーム。
でも、どれも可愛くて、私の内なる乙女ゴコロをくすぐってくれる。
…自分で乙女ゴコロとか言うのもいい加減恥ずかしい気もするけれど…。
可愛いものとか、キラキラしてるものとか、やっぱり好きなんだもん。

お行儀よく並んでいる様子を見てしばらく悦に入ってから、
新しくメンバーに加わったハンドクリームを手に取る。
うふふ。
使いきらないうちに買っちゃって、ちょっとよくなかったかなぁ、と思いつつ、香りを確かめてみる。
うん、いい香り。
これは…香りが好きで買ったわけではないけれど、でも、とってもいい香り。
だから人気があるのかな。ちょっとミーハーだったかも。
少し手にとって、ゆっくり体温で温めながら伸ばしていく。

そういうケアには、ずいぶん気をつけるようになった。
スキンケア以外の…ボディケア、って言えばいいのかな。
ハンドクリームとかリップクリームとかボディクリームとか。
もちろんそれなりには気を使ってたけれど、今はちょっと違う意味を持ってたりする。私の中で。
説明するなら…えっと、つまり…人から触れられることが格段に増えたので…
なんていうか、その、失礼のないように、っていうか…。
要するに…敦賀さんが私に触れる、敦賀さんに触れられることが日常茶飯事になってから、
やだなって思うようになった。
あ、違うの。触れられるのが嫌なんじゃなくて、触れられたときにね、
がさがさしてたりしたら、嫌だなって。
手を繋いだときに、いつもしっとりすべすべしてたら、手触りもいいかなとか。
リップクリームは…キスしたりするとき、唇が荒れてたらやだな、とか。
敦賀さんが私を触るとき、カサカサよりはすべすべしてたほうがやっぱりいいよね?って思ったり、
さらにいい匂いだったらもっといいかな、って思って、ボディクリームを使うようになったの。
…みんな「そこ」からきてるのが自分でも照れくさいというか…くすぐったい。
当然、手や唇が荒れてるのはよくないから、自分のためでもあるんだけれど、
ちょっとでも敦賀さんに良く思われたいというか…可愛いって思われたいのと同じなのかも。
とにかく、いつもぴかぴかなコンディションでいたいな、って。
できる限り。

だからかな。そういうケアをするときは、おまじないみたいに念をこめる。
綺麗になりますように。
敦賀さんに、触れてて気持ちいいって思ってもらえますようにって。
あれ…なんか、私、そういうことしか考えてないのかしら?
いやいや、そうではないと思いたいんだけれど、
でも、敦賀さんと触れあうことが日常茶飯事になってきてるから、
当然思考回路の中に占める割合も増えてきてるわけで…仕方ないというか。
…要するに敦賀さんのことは、すごくたくさん考えるってこと、ではあるけれど…

「どうかした?」
「ううん、大丈夫」

大丈夫っていうのも、ヘンなのかも。
だって今、私、敦賀さんに乗っかった状態なのよね。
乗っかってるというか…座ってる。
敦賀さんのお部屋で久しぶりに会えて、さらっとハグするだけじゃ物足りなくて、
リビングでもなんとなくソファに座ってベタベタ、してて…なんかこんな体勢になっちゃってる。
このまま…そういう感じになりそうなのがちょっと気になるけど、
至近距離の敦賀さんが嬉しそうにしてて私も嬉しいから、まあいっかぁ…。
今日、私は午後がオフだったから、ここに来る前にお風呂、入ってきたし、きちんとぴかぴかになってるはず。
ほのかにいい匂いもしてる…と思う。
「今日はいつもと違う匂いがしてるね」
そう思ったとき、敦賀さんが笑いながら
私の手を取ってそう言った。
あ…気づいてくれた。

「久しぶりに変えてみたの。イヤじゃないですか?」
「ううん、いい匂いだよ」

嬉しいな。
こんなにすぐ気づくんだ。すごい。
あのね、敦賀さん。
いま使ってるハンドクリーム、恋に効くって話題になってるのね。
恋は…とっくに叶ってるんだけど、でも、あなたに恋してるのは変わらないから、
おまじないというか、お守りかな。そう思って、使ってみたの。
いい香りって褒められるんだって。
敦賀さんと会う日に使うのは初めてだから、ひそかにドキドキしてた。
気づいてくれて嬉しいのと同時に、ちょっと恥ずかしいかも。
今日、気づいて欲しいなって、そういう下心みたいなものもあったから。

「ん?何が?」
「あ、ううんなんでもな、い」
「そうは見えないけど」

敦賀さんが近づいてきた。
今日、何度めかのキスをする。
会うのが久しぶり。
ハグもキスももちろん久しぶりで、少し緊張しながらここに来たテンションそのまま、なんとなくふわふわしてる。
さらに、思った通りの反応ももらえた。

「すぐ、わかりました?」
「うん…大体のことはわかるよ」

だから、ご褒美欲しいな、と敦賀さんが続けた。直接的じゃない言葉にかえってドキドキしながら、うなずく。
きっとそうなるかな、って…思って来たから、うん。大丈夫。

まぶたやほっぺた、耳あたりに何度もキスをされながら、敦賀さんのさっきの言葉を反芻する。
大体のことはわかるよ、って言った。
私が髪を少し切っても気づく。
初めて見せる服は必ず褒めてくれる。
今日だって、すぐにわかってた。
…見た目だけじゃなくて、ちょっとしたことでもすぐに気づいて、気遣ってくれる。
そんな風に大切に想われてること、とっくにわかってるのに、
そのたびに…その想いに触れるたびに泣きたくなるくらい、嬉しくて、どうしようって思う。
これ以上好きになったら、どうしよう。
重たいって、思われないかな。
いつまでもずっと好きでいてもらえるかな。いつまでもずっと、好きだって思っていて欲しいな。
そのために、心も身体も、できるだけいつもぴかぴかな私でいられたらなって…思う。
ケアをするのは、そういう「下心」も、あるのかなって。
…敦賀さん、私のこと、好き?
そんな想いを込めて、深く口づけた。
「おまじない」の効果、もうちょっと知りたいな。
ここからは、身体で…確かめさせてね、敦賀さん。


2018.11.04 OUT
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