冬の恋人 -KYOKO

From -PatiPati's Thanks TEXTS -SERIES*SEASONS OF LOVE2 LOVERS

雪が降るのを見ているのは好き。
明るい時には、陽の光を反射してキラキラ光っているのがとても綺麗なの。
目にするだけで何かとてもワクワクしちゃう。
そして、夜に降る雪を見るのはもっと好き。
白く覆われた世界と夜空とのコントラストが泣きたくなるほど幻想的で
その上にさらさらと降り続いていたら、時間も忘れて見惚れてしまう。

「きれー…」

ここが敦賀さんのマンションで、私がいるところを見つかったら
かなり大変なのにも関わらず、窓の外から雪が降るのを見かけた私は
思わずベランダに出てしまっていた。
雪が降るほどなんだから、当然気温だって低いのに
そんなことも構わずに、世界を覆うモノトーンな風景と、
階下に広がる宝石箱をひっくり返したような景色にすっかり魅せられていた。

「風邪引くよ、キョーコ。こんなところにいたんだ」

しばらくベランダの雪に足跡をつけたり、手すりに手をかけて
目の前に広がる景色を眺めていたり、そんなことをしながら
雪の中で過ごしていたら、後ろから声がした。

声の方へ振り向いたらすぐに、ぎゅうっと抱きしめられてしまう。
大きな身体にすっぽりと収まると、冷えていた部分がじんわりと暖かくなる。
ああ…敦賀さんだあ…

「こんなに冷えて…」
「雪が夜空に…すごく綺麗だなあって、思ったんです」

ひとり雪の中いた時にはあまり寒いなんて思わなかったのに
敦賀さんに抱きしめられた途端のその暖かさに、周りの空気の冷たさを感じた。

「髪も冷たいよ。ほら、中入ろう。それとも、もう少しここにいる?」

コートとあったかい飲み物持ってくるから、という敦賀さんの声に首を振った。
いいの。
滅多に雪の降らない東京で、こんなに綺麗な景色を見られただけで十分。
それを…あなたと一緒に見られただけで。

「あっためてくれますか?」

夜空に映る真っ白な雪があまりにも綺麗で、引き込まれそうになって、
綺麗過ぎてひとりで見ているのがなんだか怖くて、
身体から流れてくる敦賀さんが持つ熱があまりにもあったかくて愛しくて。
だからかな。
敦賀さんにしがみついて顔が見えないからって、夜の闇に紛れてこんなことを、言っちゃうなんて。
そんな私をもう1人の私が見てる、ような気がした…。

「お風呂にしようか?それとも…ベッドがいい?」

そのほうがあったまれるかもね、2人で。

なんて、我に帰った私に届く敦賀さんの言葉はとっても楽しそう。
ちが、違う…今のは…

「まって、あの、えっと」
「ちゃんとあっためてあげるから、大丈夫」

訂正する間もなくひょいっと抱えられてしまう。
行く先は多分バスルーム。
そしてその次にはきっとベッドルーム。

自分の言った言葉が引き起こした恥ずかしい事態に頭を抱えながらも
それも悪くないって思う私がいた。
だって冬だもの…1人ずつよりも誰かと触れ合ってたほうがずっとずっとあったかい。
冬は、大切な人の体温をいっぱい感じられるように、こんなに寒いのかもしれない。
じゃあ、私がさっき雪に惹かれてベランダに出て行ったのも
敦賀さんにあっためて欲しかった、からなのかな…。

「ん…」

バスルームについて降ろされたと同時に敦賀さんの指が服にかかり、
触れた敦賀さんの唇に、思考が溶けていく。
今は、冬に一緒に過ごせる人がいてくれることに感謝しよう。
敦賀さんが、一緒にいてくれることに、ありがとう。
いっぱい、あっためてね。
敦賀さん…私よりも体温高いから、そんなの簡単だよね。

ねえ敦賀さん、あなたのぬくもりにすっかり溺れちゃった私。
どんどん、離れられなくなりそうよ…



2006/12/31 OUT
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