ベランダ -REN

From -PatiPati's Thanks TEXTS -SERIES*PLACES OF LOVE

「綺麗だね」

フェンスにかじりついている恋人の後ろからそう囁いて、その身体をぎゅっと抱きしめる。
いつものように強く力をこめて、それから鼻先をやわらかな髪にうずめた。

彼女と、どういうことをするのが好きかと問われると、答えに困る。
いてくれればそれだけで、と思うような特大の愛と寛容さみたいな気持ちもあるし、
こんな風に腕の中に閉じ込めていたいというまさしく独占欲のかたまり、という思いも
同時に飼っている。
まあ、一言で言えば、彼女が一緒ならどんなことも楽しい。そんな感じだろうか。

「どう?たまにはこういうのも良いんじゃないかな」
「それはそうですけど…いっつもは、ダメですっ」

彼女いわく、ベランダだって外なんだから見つかっちゃうかも、なんだそうだ。
それは十分わかってるんだけど、
2人ベランダで過ごすのもそれ以上に楽しいわけで。

「でも今日は…綺麗ですね」
「うん」

遠くで見える花火をダシに、しばらくここで過ごすことを提案した。
君が喜ぶだろうな、ということと、そんな様子の彼女が見たい、という思惑と。

「べ、別に一緒にいるのがダメなんじゃなくてっ」

結局のところ、なんというか自分勝手なんだよな、なんて思いながら
彼女の髪に顔をうずめていると、ふとそんな声が聞こえてきた。

ああもう。
君がそんな可愛いことを言ってくれるから。


2009/10/16 OUT
Home