自分が俺の相手では社長が気を悪くしないだろうかと、彼女はよく言っていた。
…むしろ俺の方が君にふさわしいかどうか。
社長は君のことをすごく気に入ってるし、あの人は俺の荒れてた頃を知ってるし、
けっこう釘刺されたりしたんだよ。
まあ、そんなこんなで、2人でたまにこの家へ来る時は、彼女はかなり緊張している。
恋人の親に会うような感覚なのだろうか。ましてや相手は自分の上司のようなもの。
多分、社長の方ではそうは思ってないけどね。
「お、おそいですね社長さんっ…」
案の定、隣でそわそわした様子の彼女が焦れた風に言う。
「んー…帰ってくる気、あるのかな…」
反応を見てみたくてからかってみると、少しひきつったように笑ってみせる。
あー。かわいいな…。
ここが社長の家じゃなければ…なんて考えて少し自制しようとしてみたけど、
部屋に帰るまで我慢できそうにない気がして
とりあえずほっぺたにキスをする。
至近距離で彼女を愛でていたら、ドアの開く音がしたので
とりあえず元に戻った。
まるで外でタイミングをうかがっていたかのように思えるのは俺だけなんだろうか。
「おお、すまんな2人とも。急な電話が入ってしまって」
「いいえ、もっとゆっくりでも良かったのに」
俺の言葉に社長が楽しそうに笑う。
「別に続けてくれても構わんぞ」
ええ、次の機会があればぜひ。
とりあえず今日のところは続きは帰ってから、と思いながら彼女を見たら、
なんとも所在なさそうにカップを持っていて、それがやっぱりとてもかわいくて…
2009/12/06 OUT