だから、なのかしら。
今、この客間に2人きりにされていることに、一抹の不安すら覚えてしまうのは。
そんなわけ、ないわよねやっぱり。
だって急用みたいだったもの。
「お、おそいですね社長さんっ」
「ん、そうだね…帰ってこない可能性も、ありそうだけどね」
私の言葉を受けて敦賀さんがぽつりと呟いた。
困った、というのか、苦笑い、とでもいうのか、そんな感じのため息まじりの声音に
私もついつられて苦笑した。
いくら愛の人とはいえ、特別に可愛がっている敦賀さんの相手は
誰でも良いわけではないと思うんだけど、私はちゃんと合格らしい。
「まだ緊張する?」
敦賀さんが私をのぞきこんでそう言った。
「緊張というか…」
社長さんに緊張してるわけじゃなくて…あ、もちろんそれなりにするけど、
今のそわそわした感じは違う、かな。
だってほら、そんなに顔近づけたら…する、でしょ?
ここはあなたのお部屋ではないんだから、ちょっとは抑えて…
ってもう!こんなところでほっぺたとはいえキスなんか…!
「おお、すまんな2人とも。急な電話が入ってしまって」
「いいえ、もっとゆっくりでもよかったのに」
文句を言ってやろうかと思った途端に社長さんが戻ってきた。
敦賀さんの体勢は元に戻ってたけど、なんとなく後ろめたい私が目を泳がせていると
あろうことか敦賀さんがとんでもないことを口走った。
社長さんがそれに応えて何か言ってるみたいだけど、
私はなんとかごまかすためにお茶を飲むしかできなかった。
もう!敦賀さんの…バカ!
2009/12/06 OUT