もうとっくに真夜中。
わずかに与えられた時間を2人で過ごすために
彼女をつれて自分のマンションに帰ってきた。
もう一度、パーキングに停めた車の中でキスをして、
彼女の手を離さないでいると、先に行ってください、と困ったように笑う。
こんな時間じゃ誰もいないと思うんだけど、彼女に言わせれば
どこで誰が見てるかわからない、んだそうだ。
こういう時は、時間差で中に入る。
大抵は俺が先にエレベーターに乗って、
後から彼女が、折り返したそのエレベーターで上がってくる。
日常となったそんな行動に少しだけ寂しさを感じて、
それでも一緒にいられる時間が持てることに感謝して、
開いたエレベーターから降りてくる彼女の手を取る。
彼女に言われたように先にエレベーターのボタンを押した。
俺が乗って扉が閉まると、すぐに彼女がホールへやってきて、
このエレベーターが目的階までついたのを見計らって同じようにボタンを押す。
先に自分の部屋があるフロアへ降りて彼女を待つのは結構楽しい。
普段は出来ないデートの待ち合わせにも似ているからだろうか。
数分前まで一緒にいたくせに、どんな顔をするんだろう、なんて考えてみたり。
今日も、ドアが開いたら嬉しそうに笑ってくれるかな。
遅くなってごめん、ありがとう、と、もう一度伝えて抱きしめて…
そこまで想像したところで、ふとイタズラ心のような思い付きが頭を駆ける。
このまま、下へ降りてみようか。
我ながら大胆だとは思うし、彼女が1人でいるとは限らない、んだけど、
こういうスリルも日常のスパイスだと思えば、楽しく…ないかな?
ね、キョーコ。
きっと驚きのあまり言葉も発することができなくなるであろう彼女の
それでもとてもキュートな顔を想いながら、
開いた扉をすぐに閉めて下へと向かった。
2009/12/20 OUT