「はーい、OKです!」
今日は彼女が持っている雑誌の連載のゲスト、ということで2人で仕事。
オフィス風に造られたセットの中で、彼女と2人、
ドラマのように上司と部下というシチュエーションを演じる。
雑誌の企画とはいえ、スチール撮影が本格的で何だか楽しい。
前からわりと評判の良い連載で、自分も出たいと冗談めかして言っていたことが実現して
かなり楽しみにしてきた。…ロケじゃないのがちょっと残念。
恋人同士でデート、とか、そういうのもいいなあ、なんて1人で妄想していたけれど
これはこれでいい、というか、OL風に作りこんだ彼女がすごくかわいくて、
思わず顔に出てしまう。
これがプライベートなら、我ながらどうなっているだろうか想像に難くない。
撮影だから、冷静に楽しんでやれるところはある、んだろう。
「京子ちゃん、かわいいですよね」
メイクさんがそう俺に話しかけてきた。
ええ、確かに。
なんでもこの企画をずっと担当しているらしく、
その都度変身する彼女を見てきているとのことだけれど。
今日の”コスプレ”は、いわゆる普通のOL風なのに、いつになくかわいい気がする、と。
過去のパターンだと、大正風とか舞妓とか舞踏会とか、
派手目かつ多種多様だから、そういった意味での見ごたえはあるだろうけど…。
ああ、そう言われてみれば、素に近い分、
俺がいつもプライベートで目にする”最上キョーコ”寄り、なのかもしれない。
ささいなことだけど、それでも表向きと私生活では違うものだから。
じゃあきっと俺もいつもの”敦賀蓮”とは違って見えるかもしれない。
だって、仕事とはいえ相手は最愛の恋人。
フォトセッションというよりも、まるでコスプレデートみたいだ。
「かわいいね」
フラッシュが焚かれる寸前、彼女にだけ聞こえるようにささやく。
うん。本当にかわいいな、君は。
2009/04/12 OUT