抱きしめられるのも…キスも、好き。
でも本当は何もしなくても、ただそこにいてくれる、敦賀さん自身がとても好き。
もしかしたら、恋人じゃなくてもそれはそれで良かったかもしれない。
だって、いてくれるだけでいいんだもの。
自分が誰かに対してそんなことを想う日が来るなんて考えてもみなかったけれど
それは多分敦賀さんの魔法のせいだ、っていうことにしておこう。
だから、いつも笑ってて欲しいし、幸せな気持ちでいて欲しい。
そういう風に思ってることをちゃんと伝えられたらいいんだけど
なかなかうまくいかないのよね…。
例えば、今、私は敦賀さんのマンションのエレベーターに1人で乗っているけれど
2人で乗れないことを寂しくは思っても、ちっとも嫌じゃない。
だってそれは敦賀さんと一緒にいるための条件、みたいなもの。
それに、エレベーターは別々でも、扉が開けば
敦賀さんはすぐそこにいてくれるし、廊下に降りた瞬間から私達は恋人モードになれる。
手も繋げるし、恋人用の声で敦賀さん、って呼んでもいいし、
ここでただ抱き合ってたことも何回もあるしキスだってするし。
そりゃ時々はどこでもそれができたら、って思うことがないわけではないけど
私と敦賀さんがもし一般人でもさすがに外でキスは…しないと思うもの。
「つきましたっ」
開いた扉の向こうにいた敦賀さんに笑ってみせると、
敦賀さんは少しだけ困ったように微笑んだ。
…どうしたんだろ。何かあったのかな…?
そういえば今日は逢った時からちょっと元気がなかったような。
せっかく2人なのに、敦賀さんが楽しそうにしてくれてなきゃ心配になる。
何かあっても、なかなか言わないんだもの。大したことじゃない、とか。
私を心配させまいとするのはわかるけど…頼りないかな。
「どうかしました?」
こうやって聞いてても、曇った表情の本当の理由はわからないと思う…けど。
敦賀さんの答えを待たずに彼を強く抱きしめた。
何があっても、私は敦賀さんの味方だからね。
それに…ここでなら急にこんなことしたって…大丈夫だもんね。
2010/01/13
OUT