車 -KYOKO

From -PatiPati's Thanks TEXTS

車にこっそり乗り込むと、うす暗い中に敦賀さんの微笑む顔が見えて
ドキドキが始まった。
何度も見ているはずなのに、未だに鼓動が跳ねてしまう。
この人のことが好きなんだ、と、その都度自分の気持ちの強さに感心すら、してる。

キスする、かな。
ぎゅうって、するかな。

一瞬の間を置いて、敦賀さんの顔が近づいてくる。
くちびるが、触れる。

少しだけ押し付けあうようにして唇を重ねてから、互いに微かに開いた隙間で繋がった。
その感触がとても気持ち良い。
車の中だということをすっかり忘れて没頭していた。
敦賀さんも同じだったんじゃ、ないかな。
私と敦賀さんの体重を受け止めているシートがわずかにきしむ音まで聞こえてきたから。

時計は深夜。
疲れていそうな彼は、だけどいつものように艶やかに笑う。
放たれる色香が私をやんわりと包み込んだ。
今日も、逢えたんだあ…。

「少しだけ、遠回りして帰ろうか?」

敦賀さんのそんな言葉に不謹慎ながら心がちょっとだけはずむ。
いいのかな。
私はお休みだけど、あなたはお仕事よね?
あのね…私は、一緒にお部屋にいるだけでも十分幸せなんです。
車で2人で、これから敦賀さんのお部屋に帰る、ってだけでも、とても楽しいの。

「大丈夫。少しだけ、だよ」

ああ、そうか。そうよね。2人でいられる時間が少しだけ長くなる。
ここは2人きりならお部屋と同じだもの。
もうすこしだけ、「今日」を2人で、過ごせるのよね。


2009/03/30 OUT
Home