RAINING MORNING -REN

From -PatiPati's Thanks TEXTS -SERIES*SCENE OF CUTIE WEATHER

胸のあたりにふとくすぐったさを感じて、目を開けた。
既に夜が明けてずいぶん経っているようだ。
外はすでに明るくて、朝特有の空気感も薄れつつある。

そして俺の腕の中では…恋人が静かな寝息を立てて眠っている。
彼女が規則的に起こす微かな風が、空気を伝わって俺まで届いてる。

昨夜は、久しぶりの逢瀬だったこともあって
ブレーキの効かない自分に付き合わせて、無理をさせてしまったかな…。
だけど穏やかな顔で眠りについている自分だけのお姫様に、キスをひとつ。

「昨夜はごめんね…」
「ん…」

眉をしかめて少し身動きして、それからまた眠りの淵へ。
その身体を閉じ込めるように腕に力を入れた。
腕の中の小さな熱。
伝わるその温かなぬくもりに、ただ癒されていく。
仕事で忙しい毎日の疲れも、逢えないでいる時のどうしようもないもどかしさも
こうやって触れているだけで、どんなストレス解消法よりも確実だ。

言葉を交わす度に…身体を繋げる度に…近くなっていくような心。
でも、君は知らないだろうね。
近づいた距離を知りたくて、俺が…いつでも狂うほどに君に焦がれていることを。

君はこうやってここに存在しているだけで俺に幸せをくれる。
俺があげられるものは、不器用な想いだけ。
それでも懸命にただ君のことを想う。
…それだけ。

腕のあたりまではだけていたブランケットをきちんと掛けなおし、
もう一度その頬に唇で触れた後ベッドからそっと抜け出す。
彼女を起こさないように。
ご飯を作るなんて言ってたけど、そんなのいいからゆっくり眠ってて。
いつも忙しくバタバタしているんだから。
俺といる時くらいは、忘れて欲しい。

「この前テレビに出てた、あの川!ちょっと山の中だけどあそこがいいな…ダメ?」

カーテンを少し開けて外を見ると、大粒の雨が街に降り注いでいた。
昨夜の君の言葉を思い出す。
久しぶりのオフだからどこかに出かけようか、と問う俺に
君は嬉しそうにそう言っていたっけ。

この天気だと、外にでかけても車を降りることはできないだろうな。
まあ…俺は君がそばにいてくれたらそれだけでいい。
場所は、どこだって。
だけど、楽しみにしていた君はふくれっつら、かもしれないね。
いつもして見せるように、上目でふくれる恋人の顔を思い浮かべて苦笑してしまう。

ごめんね、キョーコ。
今度はちゃんと天気も調べておいて、あの川までドライブに行こう。
君のために。
…君の喜ぶ顔を見たい、俺のために。

そうだ。
君がどうしてあそこに行きたいって言ったのか、当ててあげようか?
昨日は気付かなかったけど、やっとわかったよ。
絶対そうだ。
嬉しそうに笑うだろう君の顔が目に浮かぶ。
起きたらこっそり訊いてみよう。

今日はオフ。
外は雨だけど、一緒にいられる時間は、たくさんあるから。


2005/09/25 OUT
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