「おはよう、キョーコ」
眠りから覚めたときに、いつも隣にいてくれる君に。
少しはねた髪、寝ぼけたふうに舌ったらずな可愛い口が俺だけにくれる挨拶と、
君にまた逢えたことにありがとうを込めて、おはよう。
「じゃあ…行ってきます」
先に家を出るときには、必ず行ってらっしゃいのキスをくれる君に。
足りない背丈の差を埋めるようにして精一杯背伸びをしてくれるのが可愛くて
つい、出かける時間を先延ばしにしてしまいそうになる。
帰る場所は同じ。
夜になればまた逢えるのに、本当は離れているのが嫌なんだ、なんて
君に言ったらどんな顔をするんだろうね。
逢えない間は、君の唇の感触で我慢するから、もう一度、キスしてくれる?
聞く前に、自分からもう一度。そして、行ってきます。手を振る姿を瞳に焼き付けて。
「君はちゃんとご飯、食べた?」
俺は、食べたよ。
食べてないのに、そう答えていた時も君にはバレてたね。どうしてだろう。
だけどもう、君に嘘はつけないから、きちんと食べるようになった。
食べたいと思うんじゃなくて、君に報告できるように、かな。また怒られるかな。
そして、君に怒られるのも悪くないと思ってるんだ。気を惹きたいだけ、かもしれないけど。
そういう君こそ、自分のことは後回しにしてしまいがちなんだから、きちんと食べなさい。
今日は昨日よりは早く帰れると思うから、ゆっくり話をしよう。
他愛のないことでも、君の話を聞くのが俺の楽しみだって、知ってた?
「おかえり、寒くなかった?」
出迎える為に玄関まで出てから、おかえりなさいのキス、をしようとして頬に手をやると驚くくらい冷たくて。
挨拶代わりのキスの後、ちょっとだけ、と笑う君の手を取ると、こっちも冷たい。
コートやマフラーよりも、俺の方が少しはあったかいと思うよ。
だから、少しだけ抱きしめさせてもらってもいいかな。
なんて…あっためてあげる、って言っておいて、俺の方が君の体温に触れたいだけなんだ。
やっぱり朝のキスだけじゃ、夜までもたない。
本当は、こうやって帰ってくる場所が同じってことだけでも十分なのに。どこまで俺は欲張りなんだろうね。
君に話しかけるときはいつだって、愛を伝えるように言葉を紡いでる。
おはようも、行ってきます、おかえりも、全部。
好きだよ、愛してる、を込めて。君にこの想いが少しでも伝わりますように。
2006/03/02 OUT