甘いもの10のお題 / 5.チョコレート …After REN side -KYOKO

From -MARRIED

敦賀さんがお風呂に入ってるうちに、ベッドメークを済ませておいた。
サイドテーブルには、今日プレゼントしてもらったお花を少しだけ生けた花瓶も。
ケーキを作り終えてから寝ちゃうくらい疲れてたみたいなのに、すごく明るい気分。
この前のバレンタインは確か、ちょこっとだけ逢ってチョコレート渡してお別れしたから…
こんなところからも、ちゃんと結婚したんだなって改めて実感してしまう。

顔を合わせる時間は例え少なくても、毎日同じ家で生活…してるなんて
もう慣れたかなと思うようになったのに、やっぱりすごく不思議な感じがして
ふとした瞬間に照れくさくてくすぐったくて、おかしくなるの。
今も、多分ゆるんじゃってる、顔。

綺麗に伸ばしたシーツの上に寝転がってみた。

ね…敦賀さん。私、知ってたのよ?
プレゼント、随分前から用意してくれてたこと。
クローゼットを開けたときに見つけちゃったの。
隠してたのよね?…ごめんなさい。
紙袋の中の箱を見たら、綺麗にラッピングされてて…
いつまでもそのままだからもしかして私にくれるのかな?って密かに思ってた。
でもあんな風に渡してくれるなんて想像もつかなかった。
もちろん中身もわからなかったし…。
あの時、敦賀さんにぎゅーってされながら、
もし私がプレゼントの存在を全く知らずにもらったんだとしたら、どう感じたのかな、って思ったの。
そんなの…どっちも嬉しいに決まってるのにね。
あの小さな紙袋を見つけてからは、毎日がドキドキして…
ううん、敦賀さんとの生活が毎日ドキドキ…なんだけど。

腕にはまったままのブレスレットを撫でてみた。
顔の前に持ってくると、照明が映り込んで柔らかく光を返してくる。
…そっと唇で触れる。
冷たくて、でも敦賀さんが私の為に選んでくれたその想い…ほのかに温かい。
デザインもシンプルで素敵。
毎日つけてても良さそう。そう思って、これにしたのかな、なんて。

私が逃げていかないように、手錠、だなんて…。
そんなこと…思ってるんだ。敦賀さん。
逃げるわけなんて、ないのに。
それよりも、あなたが私の前からいなくなっちゃわないかって、そのほうがずっと心配なのに…。
敦賀さんはきっと知らない。
私の方が敦賀さんのこと、好きで好きでしょうがないのに。
結婚する前から…恋人になる前からそれは変わらないのに。

「起きてたの?…寝てて良かったのに」

少しうとうとしかけたところで、敦賀さんがベッドルームに入ってきたのに気付く。
あわてて起き上がるとそのまま敦賀さんが身体を寄せてきて
抱き合うようにしてベッドに転がり込んでしまった。

「だってダンナ様におやすみって言わなくちゃ…」

そう言って微笑んで見せたら、敦賀さんが嬉しそうにキスをひとつくれた。
おやすみなさいの、キス。

「じゃあおやすみ…疲れただろう?ゆっくり休んで…」
「ん…おやすみなさい…」

敦賀さんの腕の中で目を閉じた。
私よりも少しだけ高い体温にゆっくりと侵食されていく。
もう、2人でくっついて眠るのが当たり前になって、1人で眠る夜はちょっとだけ寂しい。
だからかな、こうやって敦賀さんに抱っこされて眠りに落ちていくときが一番幸せに思える。
今日は敦賀さんと眠れて幸せ。

おやすみなさい、敦賀さん…素敵なバレンタインをありがとう…。
私は敦賀さんから逃げたりなんかしない、よ?
…だから敦賀さんも…いつまでも私のそばに…いてね。

だって…ずっと私と一緒にいてくれるって、神様の前で約束したでしょう?
…2回もね…



2006/02/17 OUT
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