体温 -KYOKO

From -LOVERS

身体を連れ去った深い快感のあと。浅い息を何度も往復させながら。
いつものことだけど、甘くて淫らに響く自分の声に、恥ずかしくなってしまう。
でも、こうやって2人でする…のは大好きで。
いつの間に、こんなに…私。

…敦賀さんのせいだからね?

繋がれたまま、少ししてから敦賀さんが覆いかぶさるようにゆっくりと身体を落としてくる。
少しだけ重たくて…涙が出そうになるくらい愛おしい、ぬくもり。
その背中に腕を回してみた。ぎゅ…っと抱き締める。

ヘンなの。
2人で快楽を追いかけるように身体を求め合っている時よりも
終わった後、こうやって身体をくっつけてるほうが、
敦賀さんをより近くに感じられるような気がして…。

ちょうど敦賀さんの口元が、私の額のあたりになる。
少し乱れた呼吸が額に触れてくすぐったい。

ね、気持ち良かった?

問うように、頬に手を伸ばす。
途端にその手を掴まれて、代わりに額にキスをもらってしまった。
その唇から伝わる温度も…くすぐったくて。

「どした…?」

低い声が耳元を震わせる。

「ん、なんでもない…」

大好き。

心で呟いてみる。
普段は恥ずかしくてとても言えないけど…。

しばらくぼーっとしていると、掴まれてた手に、指を絡められた。
長くて、骨ばった指。
そのまま口元に持っていかれて…キスをひとつ。

「気持ち良かった?」

囁かれて、見上げると、子供みたいに笑う、敦賀さん。

身体が少し疼いてしまうほど…その笑顔がかわいくて。
年上の男の人なのに、時々こんなふうに笑う。
私にありえないワガママを言ってみたりして。
テレビ局でも事務所でも、ちょっとでも2人きりになったら
すぐに、ちゅーされちゃうし、それだけで済まない時もたくさん…。

全部、私にしか見せない姿だと、社さんがそっと教えてくれた。
どこに隠してたんだろうね、あんな顔。だって…。
ふふ…。

最初の頃は、なんとも思ってなかったけど
その特権みたいなものに、酔ってる私もいて。
誰にも見せない笑顔も、私を振り回すワガママすらも愛おしい。

何もかもが…愛おしくてたまらない。
ときおり甘えてくる敦賀さんが…子供みたいに思えて。

ふと、お母さんってこんな気分なのかな…って。
私を生んだ人は…どう思ってたかわからないけど
世間で言うお母さんは…子供に無上の愛を注ぐものだって…。

でも、敦賀さんに対する想いはそれとは多分ちょっと違う。
これ以上ないくらい愛してるのは確かだけど
無上の愛というよりも、もう少しドロドロしてる。
誰にも見せない顔が嬉しくて、誰にも触らせたくなくて。

仕事だって割り切れなくて、
ドラマの相手役の女優さんにさえ嫉妬してしまう…。

これって…独占欲、なのかな。
こんなにも彼のことを好きになっちゃってる自分に、苦笑する。

恋なんてもうしない、はずだったのにね。

でももう抗えない。
いつだって私をありのまま、認めて、受け入れてくれる…初めての人なんだもの。
恋人としては、すごく愛してくれて、甘やかしてくれて。
先輩として、仕事のことではどこまでも厳しくて優しくて。
どっちの立場でもすごく居心地の良い、敦賀さんの隣。
私だけが…ここにいられるんだって思っててもいいよね…?

「あ…、ま、敦賀さ…ん?」

繋がれてた場所に少し動きを感じた。同時に頬に触れる唇。
慌てて敦賀さんを見上げると、夜の帝王チックな笑顔が目に入る。
や、どうしよう…こんなときは絶対…。あのセリフ。

「もいっかい、しよう?」
「っ…もいっかいって…もう3回も…っ」

わー、私っっ、なんてことを…。
口に出して、自分の口走ったことに気づいて顔から火が出そうになってしまう。

「まって、今の訂正っ…」
「じゃあ、4回目」

さっきから繋がれた手でゆっくりと指の間をなぞられてるせいで
少しだけ…体温が上がってしまったみたいだ。
そんな風に敦賀さんは私の身体にあるスイッチを知り尽くしてる。
だから、お誘いが疑問形でも、有無をいわさず、だけど…イヤじゃない。

2人でいられるわずかな時間…もっと彼の体温を感じたくて。
彼の頬にそっと手を伸ばす。

引き寄せて、私から唇を重ねた。
ぴったりと合わさるように押しあてて、柔らかい唇の奥…そっと舌をもぐりこませる。
ゆっくりと絡み合う動きが少しずつ…深くなって。
少しして、敦賀さんの手も私の顔を包み込む。
自分から仕掛けたキスだけど…それだけでもうどうにかなってしまいそうなほど。

…かなわない。

さっきのお誘いの答えを…キスに込めて。



2005/09/03 OUT
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