吸い付くように応えてくれるその肌は、いくら味わっても足りない。
自分の中に彼女をもっともっと残しておきたくて、
彼女には一緒にいられない時も自分の感触を覚えていて欲しくて必死だ。
本当なら、もっともっと自分のものだという証を残しておきたいけど
仕事柄そうもいかない。
と言ってみたところで…そんな簡単に自制がきくものでもなく。
所々、目立たないようにひっそりと紅い印を刻む。なるべく、服で隠れるような所に。
「ん…っ…あ…っ…ぁん…」
滑らかに白くて扇情的で、だけどひとたび俺が愛撫を施せば、
はっとするほど艶やかに薄紅に染まる、清廉と淫らさを併せ持つこの身体も、
俺と彼女が身を置いている世界では、人目に晒されることだってないとは言えない。
先日も、雑誌の特集ページで背中が大きく開いたドレス姿を披露している彼女を見せられた。
美しい格好をして微笑んでいる恋人や、その仕事を否定するわけじゃないし、
そんな彼女を見るのは俺にとってもとても喜ばしいことだけど
本音を言えば、そういう姿を見ることができるのは俺だけであって欲しい。
だけど、こんな風に、何も身に纏わないままで素直に身体を開かせていく、
世界で一番美しい彼女の姿を知ってるだけでも、きっと俺は満足しなくちゃいけないんだろう。
「綺麗だよキョーコ…」
そう…こうしてる君は、眩暈がするほど美しくて、抱くたびにどうにかなってしまいそうだよ。
俺の言葉に反応して涙目でこちらを見やる彼女に、微笑んで見せた。
蜜に溶けた花びらに寄せていた唇を手の甲で拭って、彼女のそれにそっとキスを落とす。
奥に差し込んでいた指をくちゅくちゅっとかき混ぜながらキスを進めると、
驚くほどの濃厚さでもって俺の唇に自分のそれを返してくれる。
俺を受け入れてくれる準備がとうに出来ていることはわかっているのだけど
少しだけ意地悪をしてみたくなり、舌が絡まるたびに差し込んだ指をぎゅうっと締め付けられながら、
しばらくそのキスに酔うことにした。
瞼に焼きついて離れない、その大胆なドレス姿をもう一度思い浮かべてみた。
こんな格好を人前に晒して…、という理不尽な怒り、いうなれば嫉妬なのだけど、
それと、雑誌を通して数え切れないほどの人が見ていたとしても、
美しく微笑む恋人を見ることができたという嬉しさがない交ぜになって、なんだか妙な気分になったっけ。
綺麗に着飾っている彼女を見て、それだけでドキドキしてしまうこともあるし
そういう時には手を伸ばして触れたくなる衝動を抑えきれなかったりも、する。
だけどそれは彼女がしている綺麗な格好に対してではなくて、
あくまでもそれが彼女だから、だ。
要するに、どういうことをしていようとそれが彼女である限り、俺はその誘惑には抗えない。
「あん、あぁ…っ…ひゃ…あん…」
世間一般で言う恋人同士になってしばらく経つけど、今でもふとした瞬間に
今まで知らなかった彼女の仕草や癖、表情などを見つけることができると、
それだけでとても嬉しくなる。
大抵は、俺と2人でいる時の無防備さが彼女にそうさせるんだけど、
それを知ることが出来るのは自分だけだと教えてもらえるのは本当に気分が良い。
きっとまだたくさんあるに違いない、みんなが知らない君の表情。
もっともっと俺に見せて…俺だけに。
「ん…っ…は…ぁん…」
ゆるゆると彼女の中をかき回しながら、もう一度、唇で身体を滑り降りていく。
鎖骨をなぞり、固くしこった胸の突起を舌先でつついてみたり、
その度に締まる感触を指で楽しんだり、しながら。
臍のまわりをくるりと舐め回したあと、彼女の身体を少し傾けて愛撫の矛先を背中側に向けた。
そうそう、コレを見つけたときには嬉しかったな。
背中側の左寄り、腰の一番細いところから少し下のあたりにある小さなホクロ。
きっと、君も知らないはず。普通にしてたら本人には見えないんだから。
初めて後ろから背中に愛撫をした時に、気付いたんだ。
仕事ならともかく、プライベートではこういう関係にならなきゃ気付かなかっただろうな。
ここに、こんな風にできるのは自分だけなんだと、少し誇らしくなって、
唇を寄せて、その小さなホクロの横にこっそりキスマークを付けた。
本当に君を手に入れることができたんだと改めて実感して、嬉しかった。
それからは、こうして身体を重ねるたびに同じところにキスをして、同じところに跡を残した。
君に気付かれないように、消えない所有印を刻んでいくのは
独占欲がほどよく満たされて、君になかなか逢えないのも帳消しに出来そうなくらいだよ。
「いい…?」
指を抜き、追いすがるようにひくつく蜜壷にキスを1つ。嬌声が上がる。
それから答えを聞く間もなく、とろとろに濡れている彼女の秘所に自らをあてがう。
ほら…こんな時の俺を見つめる控えめな欲望を宿した瞳なんか、たまらないよ。
何度思ったか知れないけれど、やっぱり、こういう風にしてる時の君は本当に綺麗だ。
不特定多数に向けて微笑む君を他人に見せるのは仕方ないけれど、
そこからの続きはみんな俺のものだって…世界中に言って回りたい。
可愛くてたまらない笑顔とか、キスの後、照れたように染まる薄紅の頬、
時々見せるはにかんだ表情や、俺の名前を呼ぶときに可憐に動く桃色の唇とか。
この世に存在するいろいろな表情の彼女はみんなみんな、俺だけのものだ。
雑誌やテレビの向こうにいる彼女も、こうして俺の腕の中で乱れる彼女も全て。
そして、君の身体にある小さなホクロと消えることのないキスマークも、
誰も知らない…君も知らない俺だけの、君の秘密。
何度も同じところに唇を寄せているから、もしかしたら気付かれてるかもしれない。
だけどもう少し、俺だけの秘密にさせてもらおう。
そういうのも、俺に許されてる特権だろう…?
「つるがさん、どうかした…?」
2人一緒に果ててしばらくした後、息が整った頃に、
腰のあたりを撫でさする俺の手に自分のそれを重ねて、彼女がそっと口を開いた。
なんでもないよ。
君は俺のものだって…確かめてるだけ。
またしばらく逢えないんだと思うと、瞬く間に禁断症状が出そうな自分を宥めてやらないと。
あとはやっぱり…
「…キョーコは可愛いな、って…」
「なっ…」
いつもの通り、俺のストレートな言葉に照れて絶句している彼女を
包み込むようにぎゅっと抱きしめた。
本当に、可愛いよ…可愛くて仕方ない…
2006/10/09 OUT