逢いたかった。逢いたかった…逢いたかった。
…君に言っても信じてもらえるかどうかわからないけれど
俺はもう、1日だって君と離れて正気でいられる自信がない。
社さんにもずいぶん注意されたよ。
彼じゃないと気付かないくらいの、集中力の乱れ、ってだけだけどね。
今日も、…何日ぶりだっていうほど離れてたわけじゃないだろう?
3日―…、そう、「たった」3日だ。
君はそう言ってたね。
「たった3日ですよ?」
俺もそう思ってた。
でも…今となってはもう俺は…一秒だって我慢できないよ。
君の姿を直に見てしまったら。
さあ…どうしようか…今だって十分ひとりじめしてるつもりだけど。
キスをねだればちゃんと応えてくれるし、身体を求めたら、嫌な顔ひとつしないで俺を受け入れてくれる。
俺を…欲しがってもくれる。
君からのお誘いもちゃんとあるし、そういうときの君は本当に可愛い。
本当は、これ以上贅沢は言えないくらい幸せなんだとも、思う。
それに、もちろん俺は…君がドラマに出るのも、舞台に出るのも、
君の仕事を全部ひっくるめて君を愛してるんだよ。
だけど…
閉じ籠めてしまいたくなるほどの独占欲が頭をもたげてくる。
そんなのと四六時中闘ってるようなもんだ。
正直…君を手に入れてからのほうが…ずっと辛い。
「…んっ…っ…ふ…っ」
ほら…こんなことだけで…ここが事務所だろうと何だろうと
ただこうやって唇を重ねて攻め立てて、
君が切なげに漏らす吐息を聞いてるだけで、こんなにも、満たされる。
身長差を埋めるために背伸びをしてくれるのも可愛くてたまらない。
何も知らなかった彼女に、
唇を使って互いのそれを濡らすほど愛撫したり、舌を熱っぽく絡ませる術を教えて。
俺だけの為にしてくれるように完璧に俺の好みに合わせて。
ずいぶん上手くなって…俺を翻弄するようになってしまってる。
こんな場所で求めてしまう俺に、憎まれ口は叩いても、本気で嫌とは言わない。
そんな君が…俺を駆り立てる。
…どこまでなら俺は許される?
君の中にもっと…入り込みたくて、
俺でいっぱいにしてしまいたくて…。
だけど、離れた瞬間からまた、乾いていくんだ。
君を求めてさまようしかなくなる。
まだ離れないでくれ…もっと…もっと…。
3日分の距離を埋めるように、彼女を貪り続けた。
力が入らなくなった身体を、ソファに横たえる。
それでも続けられる…甘すぎる口づけ。
―ここは…事務所の応接の一部屋。
ようやく俺と彼女を繋いでいた身体への入り口をそっと離す。
その先に触れたくて、やっとのことで思いとどまった。
何度もベッドじゃないところで無理をさせるわけにもいかないし、
今日は、俺の部屋で2人で過ごせることにもなってる。
ただ…待ちきれなかった俺の先走ったキスで自分が煽られてるだけで…。
瞬間に目に入ってきたのは…彼女の濡れた唇。
見慣れてるはずのそれに、身体が強く鼓動を打ってしまう。
「逢いたかったです…すごく…。おかしいですよね、もっと長い間別々だったこともたくさんあるのに、たった3日で…」
彼女がやわらかく微笑んで、そう言った。
…途端に、心を覆っていたもやもやとしたものが払われるのを感じる。
ああ…俺もだよ。逢いたくて…おかしくなりそうだった。
こんなことを何回繰り返すんだろう。…君を想う限りは永遠に。
でも決して嫌なわけじゃ、ないんだ。
君と2人でいることが…君によって…俺には許されてる。
だからこそ…確かめ合うこともできる。
君という、たったひとつのかけがえのない存在を。
だったらこの繰り返しも、多分悪くない。
願わくば、君が…俺に愛想を尽かしませんように。
それと、それがただの紙切れでも金属の輪でもいい。
俺と君を繋ぐものを…増やしたい。
それを告げるのは…もう少し後かもしれないけれど。
2005/09/10 OUT