ごめん、ね -KYOKO

From -LOVERS

「なん…でここに…」
「逢いたかったから。…もう…待てない…」
「だからってこんなとこ…んっ……ぅ…」
「…入れてキョーコ…」

どうしてだろう。
いきなり、私の部屋の前までやってきた敦賀さんに怒ることもできなくて
ただ攻められるままに唇を、舌を…彼に預けてしまった私がいる。
久しぶりのそれが、身体にそっと火を灯す。
すぐ近くで響く、絡まりあう音すら耳に心地よい。

「見つかっちゃう…早く入ってください…」

唇を強引に離してから急いで鍵を開けて、敦賀さんの手を引いて部屋に入る。
とりあえずこれで…誰かに見られる心配はなくなった。
敦賀さんが、つけられたりしていなければ。
キスに濡れた唇で、彼に文句の1つも言ってやろうかと振り向いた瞬間。

「やっと…」

今までにないくらいの力で彼の腕に閉じ籠められる私の身体。
跳ね返そうとしても力で敵うはずのない私の抵抗はあっさりと無に帰ってしまう。
どうしてだろう…。
敦賀さんに怒ってたはずなのに、抱き締められてることが嬉しいと思う。
本当は、逢いに行こうかと思ってた。
いつもなら敦賀さんと過ごすのが当たり前な、お休みの前の夜。
でも…つまらないことで怒ってた私。
許したわけじゃ、なかったのに…。

だけど観念した私は、敦賀さんの身体にそっと腕を回した。
ぎゅっと…ぎゅうっと力を込めた。
いつもの香り。大きな背中。私より少し高い温度を持つ、その身体。
その熱に、はりつめていた気持ちが一気に溶け出していく。

…まだ怒ってるなんて、嘘。ごめんなさい。
逢いたかった。私も、もう待てなかった。ごめんなさい敦賀さん…大好き。
だからもっと、もっとぎゅっとして?
なんで私の方から逢いに行かなかったんだろう。
こうして、逢いにきてくれるって…信じてたから?

「ごめん、キョーコ…」
「ん…」

再び繋がり合う唇たち。
自分がどれだけ待っていたのか思い知らされる。
こう、されたくて、したくてたまらなくて。

「もう俺から離れていったり、しない…?電話にも出ないし、どれほど心配してたかわかる…?」

啄ばむように繰り返されるキスの合間に敦賀さんが囁く。

そんなのしない…。離れたりなんか、するわけない。
そんなこと、できるわけなんて、ないの…よくわかってる。

「つ…るがさんこそ…私の前からいなくなったり…」
「しない、絶対。…約束しただろう?君こそ…」

そう言って、ドアの前で混ざり合ったさっきよりもずっとずっと深く敦賀さんが入り込んでくる。
舌先を吸われて、絡ませようと追いかけた先を戯れに引っ掛けられて。
もっと…もっと。

玄関先の廊下に押し倒されるようにして2人で重なり合う。
そのまま口付けを繰り返して、見つめあって。
敦賀さんのひどく色っぽくて熱い視線に気付いた。
いつも2人で…してるときの瞳、だ…。
絡む視線に跳ね上がる心臓を抑えながら、でももうそんな目で見つめられたら…。
視線に射抜かれて、身体の中心が疼いてしまう。
そのうちに…敦賀さんの顔がゆっくり近づいてきて、唇が私の瞼に触れる。
思わず目を閉じると、そこから頬に触れて、私の唇を掠めて耳元へ進んでいく。
耳から首…そして鎖骨へと這う唇。きつく吸われる。いつもの…手順。

ここで…する…の…?

「ん…だ、ダメ敦賀さんここ…玄関だよ…?」
「部屋までもちそうにない…ここで…させて…しよう?」

そう言いながらトップスの裾からするりと入り込んできた敦賀さんの手が
私の身体をなで上げながら、胸へと這わされる。
下着の上から摘まれて、思わず声をあげてしまう。
強く摘まれて、力が抜けて抵抗もできなくて…多分するつもりも、もうなくて。

「あっ…ん…」

小さく声を上げた唇は再び敦賀さんに奪われたまま。
口内を思うままに犯されながら、その指が布をかき分けて胸を攻め始める。
転がされたり、擦られたりするたびに零れる悲鳴も敦賀さんに受け止められてしまう。
久しぶりに敦賀さんにされる愛撫…それだけでもう…もうおかしくなってしまいそう。

「っ…」

そのうちに、器用な手が着ていたものを捲り上げて、露になる胸。
私を食べつくしたその唇が、胸にそっとつけられた。

「っ…は…あんっ…」

さっきから響くのは私の声。敦賀さんの吐息と舌が紡ぎだす少し淫らな音。
ちゅ…ぴちゃ…くちゅ…そんな…私をダメにさせる、音…。

ぬめる舌先で転がされ、強く、弱く吸われてそれから唇でやわやわと甘噛みされて
声を留めさせることもできない。
快感を訴えるように硬くなっていくそれが、また一段と刺激をとらえて身体に響かせてしまう。
そのうちに、乳首を吸われたまま、敦賀さんの長い指が丁寧に身体を辿りながら下腹部に降りていく。

入り口をゆっくりとなでるその長い指に、すぐに液体が絡んでいくのがわかる。
触れられただけでひくひくと蠢いて、身体に刻み込まれた記憶がすぐに呼び戻されてしまう。
欲しい。
敦賀さんが…どうしようもなく欲しい。早く…ひとつになりたい。
こんなにもすぐ欲しがってしまう自分の身体、羞恥さえどこかに行ってしまった、みたい。
敦賀さんの「それ」でぐちゃぐちゃに、されたい。激しく突いて…掻きまわして。

「キョーコ…」

熱に浮かされたように敦賀さんが私の名前を呼ぶ。
いつもなら…いつもはこんなにすぐ濡れさせてしまう私をからかったり、するのに。
だけど…それよりも今日はずっと身体が震えてしまう。
名前を呼ばれただけ。
それなのに…愛してる、って言われるよりも、敦賀さんの気持ちが込められてるような気がして。
玄関でしてる。そのことと…ただ言葉もなく求め合うままに、進んでる。
それが逆に私達の身体を追い詰めていく。
敦賀さんが大きくなってた彼自身を取り出してゴムをかぶせるのが見えた。
そっとあてがわれた瞬間。必死に飲み込もうとしてる私。
指の愛撫で中途半端に達してるそこが、先で待つ溺れるような快感を求めて駆け出し始める。

「あ…あぁんん…っ…」

こんなときでも、敦賀さんは無理に入ってきたりはしない。
ゆっくりと、私の呼吸に合わせるように分け入ってくる敦賀さんを、私も精一杯包み込む。
逃がさないように、なのかな。
自分の意思とは遠いところで敦賀さんを締め付ける自分に少し笑ってしまった。
敦賀さんでいっぱいに満たされてることの幸せと、もうそれなしじゃ居られなくなっちゃった私の身体と。

ケンカの後の仲直りセックス、なんてありえない。
そんな風にしか仲直りできないなんて嘘、って…そう思ってた。
セックスは仲直りの道具なんかじゃないのに、って。

でも今日の私たちは、絶対になしくずしなんかじゃなくて…
ただきっと、お互いが足りなくてもうどうしようもなくなってた。
ごめんなさいって素直に言えなかった尖った気持ちが、
敦賀さんの温度に触れただけですっと消えていくのがわかった。
触れ合うだけで隙間を埋めることができるのは、
普段から呆れるくらいにお互いへの気持ちを届けあってるから、だよね…?

身体がぴったりと重なり合った後、2人で小さくため息をつく。
落ち着くのを待ってくれてるのに、すでに走り始めていた私は
まるでねだるように何度も敦賀さんをきゅっと締め付けてしまう。
それに応じるかのように、敦賀さんがゆったりと私を突き上げ始めた。
少しずつ慣れていった繋がる場所が擦れ合う感触。
あふれる水音と一緒にじわじわと昇ってくる…その快感に、頭が真っ白になっていく。

「っ…あ、あんっ…は…あっ…」

揺れる視界。
動き続ける敦賀さんにつかまりながら、私も身体を揺らめかせる。
我慢しなきゃ、って思うほど大きくなってしまう声。
どうしてなのかわからないけれど、涙があふれて何も見えなくなる。
目を閉じて、溜まった涙を押し流してから敦賀さんの表情を確かめようとして
懸命に目を凝らすと綺麗な顔が歪んで見えた。

「…っ…」

すぐ近くにある敦賀さんの唇から、短く息が零れてくる。
少しずつ、荒くなる呼吸。
…敦賀さん、も、気持ちいい……?

目が合ったのに気付くと、私の腰を掴んでいた手で頬に触れて
いつもみたいに微笑んでくれた。
優しい瞳。
手を伸ばしムリヤリにキスをねだって、応えてくれる敦賀さんの口内を貪るようにして絡めあう。
どれくらいしても足りないキスと…身体を繋げ合うことと。
すぐそこに来ているとめどない快楽。次第にそのことしか考えられなくなる。
もう…ダメ…。

「あんっ、も…いっちゃ…ぁっ…もう…ダメつるがさ…ああ…っ!」
「っ…キョー…コ……っ」

私がいった後、敦賀さんが私の名前を短く叫んで…それから私の身体に覆いかぶさる様にして重なって。
まだ繋がったまま、ぎゅっと抱きしめあう。
息を整えながら小さく「ごめん」と謝る彼に、精一杯微笑んでみせた。

敦賀さん、気付いてる?
敦賀さんが言う「ごめん」は、「愛してる」って言ってるのと同じ。
あなたにそう言われてしまうと、怒ってたことなんて本当に小さなことに思えてしまう。
あの時は、ほんとに怒ってたの。
でも…もう1人の私が、謝れなくて意地を張ってあなたから遠ざかってた私を、ずっと責めてた。
私…自分がされたくないことを、敦賀さんにしてしまったんだよね?
電話に出なくて、ちゃんと話そうともしなくて…心配させて。
私だって怒ることもあるって、ちょっと思わせたかっただけなのに、いつの間にかタイミングを見失ってた。

ねえ敦賀さん…もう1回キス、して…?
目を閉じて、彼の頭をぎゅっと引き寄せた。
何度触れ合わせたかもうわからないくらいのキスを、また何度も、何度も繰り返す。

「ちょっと…待ってて…」

呆れるくらいの口付けの後にそう言いながら、敦賀さんが私の中からそっと出て行く。
引き抜かれるその感触に、少しの寂しさ。
どんなに身体を重ねても、ひとつにはなれない。
その代わり、こうやって2人でいられるときには1人のときよりもずっとずっと幸せになれる。
だから人は…自分以外の誰かを好きになったりするのかな。
敦賀さんが、自分と、乱れてしまった私の後始末をしてくれてる間、
その様子をぼうっと見つめながらそんなことを考えてた。

何もかもを敦賀さんにまかせて、しばらくした後。
敦賀さんが私を抱き上げて、ベッドルームへ歩いていく。
その間、ぎゅっとつかまっていた私にキスをして、それからベッドの上に私を下ろした。。
すぐにベッドサイドに腰かけた敦賀さんと並んで座る。寄りかかる私の頭をそっと撫でる大きな手。
離れてた時間を取り戻すみたいにしがみついた。
さっき…あれほど抱き合ったのに、まだ離れたくない。時間も遅いけど…もっと一緒にいたい。

「…敦賀さん…もう…帰…る?」

私はオフだけど、敦賀さんは明日もお仕事。本当は、帰ったほうがいい…よね。
敦賀さんが私の部屋に泊まることなんて滅多にないし
忙しい人だから眠る時くらい自分のベッドでゆっくり寝かせてあげたい。
でも今夜は一緒に…眠りたい。
抱きしめられたまま。
帰る…よね…?

「…帰ったほうがいいなら…帰るよ」
「…そんなわけない…もん」

敦賀さんがそう言ったすぐ後に、ワガママだとわかっていながら自分の願望を口にしてしまう。
帰ったほうがいいなら、なんて、ずるいよ。
…帰って、なんて言えないもの。
でもそれはずるいんじゃなくて、敦賀さんの優しさ。
わかってる。わかってるの…。
今日は、ワガママ言っても、いいよね。
私、まだちゃんと謝ってないのに、帰るなんて、言わないよね。

「じゃあ…泊まっていってもいい?」
「ん…」

ここにいて。そばに…いて。
敦賀さんの体温に触れながら、一緒にいられる時間が延びたことに心からホッとした。
今日は久しぶりに…抱かれたせいなのかな、
自分でも思い切り甘えたい気分になっちゃってるのがよくわかる。
箍が、外れちゃったみたい。

「ごめん…今日は…」
「ん…いいの…私も…ごめんなさい」

敦賀さんが最初に謝ったのは、多分ケンカしちゃったことについて。
今謝ってるのは、玄関でムリヤリしちゃったこと、かな。
私が謝ってるのは、電話に出なかったこと。話もしようとしないで、心配させたこと。
もう、敦賀さんが怒ることは…しないから。
可愛い服も、やっぱり「敦賀さん」にはかなわないんだって、わかった。
だから。

「もう…あの服着るの、やめるね」
「いや、いいんだ…俺もどうかしてた。本当に可愛いと思ったのに…あんな言い方して」
「ううん…でもやっぱり可愛いから、敦賀さんといるときだけ、着てもいいかな…」

─雑誌で見た可愛いキャミソールを、どうしても着てみたくてこっそり買っちゃった。
それは実際に着てみたらかなり露出が多くて、それでもすごく可愛くて
敦賀さんにも見て欲しくて、それを着て逢いに行ったら。
肌が出過ぎだよ、君は自分がどういう目で見られてるのかわかってる?って…。

「そんな下着みたいなのを着て人目につくところを歩いて来たの?本当にもう…君は何にもわかってないんだ?」

少し怒りながら言われた言葉。
なんで?別に悪いことしてたわけじゃないのに。
敦賀さんだっていつも私が新しい服を見せたときには、可愛いよって、言ってくれるのに。

「…だって可愛いから着てみたかっただけなんだもん!…もういいっ…帰りますっ」
「あ、キョーコ待っ…」

確かにちょっとマズイかなとも思ったけど、そんなに怒らなくたっていいじゃない。
可愛いって言ってくれるかと思ったのに、そんな言葉なんて予想外だった私は、
敦賀さんの言うことには耳を貸さないで、彼の部屋を後にした。
だって…本当に、敦賀さんに見せたかっただけで、
そんなの、他の誰かが見てどう思うかなんて私には全然関係のないことで…。
ちょっと、露出度高いかな、ってくらいにしか思ってなくて─

その後すぐにアレがきちゃったって…オマケつき。
それで、あんなにイライラしちゃってたのかな、って、思ったけど、
つまんないことなのに、その後の敦賀さんからの電話には全く出ないで
事務所でバッタリ逢っても、そっけなくしちゃって、自分からはどうしても折れられなくて
本当は仲直りしたいのに、素直に、なれなくなってしまってた。

敦賀さんが、こうして逢いに来てくれなかったら、まだ意地をはってたかもしれない。

「キョーコ…」
「…ん」
「まだ、怒ってる?」
「ううん、もう怒ってない…ごめんね敦賀さん…敦賀さんは…怒ってる?」
「怒ってないよ。俺は…許してもらえるかな」

許すなんて…。
私の方こそごめんなさい。
逢いにきてくれてありがとう。素直になれなかった私を、許してくれる?

「ん…」

私の顔を見ていた敦賀さんがすごくホッとしたような顔をして、
いつものように膝の上に乗せてくれた。
向かい合って、笑い合って、それからお互いをぎゅっと抱きしめた。
ケンカの後、少しバツが悪かったけど、でもお互い様。
本当につまらない理由…夫婦喧嘩は犬も食べないって…誰かに聞かれたら呆れられそう。

敦賀さんの肩越しに、床にたたんで置いてある、原因になったキャミソールが見えた。
今思うと、敦賀さんが怒ったのもわかる気がする。
でも…すっごく可愛かったから…見て欲しかっただけなのに。
ねえ敦賀さん、2人きりの時なら、いい?
いいよね。可愛いよ、って…言ってくれるよね。

「あれ…もう1回着てみせてくれる?」
「いいの?」
「うん、俺にだけ…見せて」

ちょっとあっち向いててね。
そう言って、着ていた物を脱いでからキャミソールを身に付けた。
ピンク色のサテン生地とレースの縁取り、何段も縫い付けられたボリュームのあるフリルがすっごく可愛い。
下着に…見えなくもないけど、雑誌ではちゃんとアウターとして撮影してたから…いいかなって思ったんだけどな。

「…どう…ですか?」
「あぁ…すごく、可愛い」

いつもみたいに笑って可愛いって言ってくれた。よかった。
嬉しくて敦賀さんのほうに戻ると、さっきみたいにまた抱きとめられて少しだけキス。
それから、敦賀さんの唇が頬を辿って首筋からデコルテまで降りて…ちょっと敦賀さ…

「…ダメです…もうダメ」
「そう?」
「だってさっきしちゃったもん」
「俺は構わないけど?」

構うでしょっ…あなたは明日もお仕事なのに…。
そう言いたいのを我慢して黙って睨む私に、敦賀さんが大きな袋を差し出す。
どこかのお店の袋みたいだけど、何だろう。

「なあに?これ」

受け取りながら敦賀さんに問う。
いつの間に持ってきてたのかな、全然気付かなかった。

「プレゼント」

敦賀さんの思わぬ答えに、一瞬戸惑う。
プレゼント?
でも…今日って何か特別な日だったっけ…?
私の誕生日でもないし、恋人になって何ヶ月目、っていう日付でもない。
もっと小さなプレゼントみたいなものはよくもらうし、
敦賀さんがお仕事でもらってきたものを私にくれることも結構あるけれど、
こんな大きなものを何でもない日にもらったことなんて、あったっけ。

「誕生日はまだですよ?」
「誕生日じゃないと、受け取ってもらえない?」
「そんなことは…ないですけど…でももらっていいの?」
「もらってくれないと困る」

ほら、早く開けてみて、と促されて袋を開けると、中から出てきたのは…

「これ…ジャケット?」
「そう。この服に似合うと思って…それなら、あんまり見えないし」

着ているキャミソールに合わせたかのようにピッタリなジャケット。
どうしよう。
敦賀さん、わざわざ買ってきてくれたんだ。レディース物…。
あんなに怒ってた私の為に…買いに行ったんだ…。
敦賀さんがあんなに怒ってた、このキャミソールに合わせられるように。
どうしよう。
やだ…もう…不意打ちだよ敦賀さん。
逢いに来てくれたのも嬉しくて仕方なかったのに、こんなプレゼントまで用意してあるなんて。

「…可愛い…ありがとう敦賀さん…すごく嬉しい」
「よかった」

もうそれ以上、言葉にならなかった。
取り出したジャケットを眺めてる私を敦賀さんが抱きしめてくれて、それから2人でしばらく黙ったまま。
ときどき髪を撫でられたり、耳や首にキスされたりしながら、ずっと2人で座ってた。

どうしようもなくこの人が好き。
それを何て言って伝えたらいいのか、わからない。
言葉で表現できるよりもずっとずっと大きくなってる、この気持ちを。
だから時々、身体を繋げたりしたくなるのかな。
どうしたらわかってもらえるのかな…
好きで好きで、って永遠に繰り返しても、まだ足りない。

「今度は…これを着て逢いに行くね」
「うん…じゃあ俺は…それを脱がせてもいい?」

やっとのことで口を開いた私に、敦賀さんが静かに、だけど悪戯っぽくそう切り返す。
もう…ダメって言ったって脱がしちゃう…くせに。
でも、やっぱり一応は言っておかないとね。

「ダーメ」

可愛い、って言ってくれたら、脱がせても…いいよ?
…今度は玄関先じゃなくて、ベッドの上で、ね。



2006/03/29 OUT
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