『はい』
「敦賀さん?」
『ん。キョーコ、さっき電話しようとした?』
「はい、かけちゃいました。でもお話中で」
『俺もかけようとして話し中だったから、ちょうどかぶったのかもね』
「そ…ですか。何か大事な電話だったのかと思って…」
『キョーコからの電話より大事なのなんて、ないよ?』
「そんなの、あ、ありますよ…お仕事とか」
『キョーコのが大事』
「またそんなこと言って…もうお仕事終わってます、よね?」
『ん、終わったよ。初日なのに打ち上げとかなんとかいって他の人たちは飲んでるみたいだけど』
「行かなくて良かったんですか?」
『そんなのに行ったらキョーコに電話できなくなるだろう?』
「あぇ…いやあの…ほら、これからしばらくロケなのに、他の役者さんとかスタッフさんとコミュニケーションとか」
『大丈夫。キョーコは、仕事、どうだった?』
「今日は雑誌の取材があって、撮影にちょっと時間かかっちゃいました」
『ひとりで?』
「ん、ひとりです。私の特集ページを組んでくれたの。可愛い服、たくさん着せてもらって楽しかったですよ」
『そっか…見てみたいな、いつ発売なの?』
「発売は先ですけど…ポラならあるから、帰ってきたら、見…ます?」
『今見たい』
「今は無理ですよ」
『メールで写真、送って?』
「あ、そっか…じゃあ、これ切ったらやってみます。でも綺麗に写らないんじゃないかなぁ…?」
『もっと写真とか、持って来るんだった…逢いたくて我慢できそうにないよ…もう』
「お仕事なんだから、しょうがないです」
『…キョーコは寂しくない?』
「そ、そりゃ…寂しいです…けど…」
『CMでキョーコがテレビに映ったら、飛びつきそうになる』
「なっ…」
『嘘』
「も、嘘って…もう…」
『嘘と言うか、まあ…そういう気持ちには、なるかな』
「……敦賀さん」
『ん?』
「あれ、もう使っちゃいました?」
『いや、明日の夜にでも使おうかなと思ってるよ。せっかく誕生日に、ってくれたからね』
「…………」
『…キョーコ?』
「わ、私も同じの買っちゃったんです。えっと…だから…」
『帰ったら一緒に使う?』
「ち、違いますっ!」
『そんな思い切り否定しなくてもいいのに』
「ごっ、ごめんなさいっ、そうじゃなくて…」
『わかってるよ。明日、仕事終わるの何時ぐらいになりそう?』
「私、ですか?…えっと7時くらいには終わるかも。予定ですけど」
『じゃあ…9時くらいに、電話するから。お風呂はそれまで待ってて』
「…はい」
『楽しみだな』
「な、何にもしませんからね?お話するだけですから…っ」
『それは明日になってみないとわからないよ?』
「わかりますっ」
『あはは…』
「あ、12時過ぎましたね」
『ああ…キョーコはもう寝たほうがいいね。明日も朝早いんだろう?』
「ちょっとだけ。大丈夫ですよ、これ切ったら寝ます。その前に写真を送りますね」
『待ってるよ。夢に出てきてくれるように枕元においておこうかな』
「ふふ…じゃあ、少ししたらお邪魔しますね。それと…お誕生日、おめでとうございます」
『ありがとう…嬉しいな、今年は2回もお祝いしてもらって』
「もしかしたら、明日はスタッフさんたちが何か用意してくださってるかもしれないですね」
『んー、そうだね…まぁ適当に切り上げてもらうよ』
「お祝い、どんなのだったか後で教えてくださいね」
『キョーコ』
「はい?」
『逢いたいな…』
「…………はい」
『キス、してくれる?』
「…じゃあ、目を閉じてください」
『閉じたよ』
「…………はい」
『聞こえなかった』
「もー…ちゃんとしました。つ、続きはこっちに戻ってきてからです…っ」
『じゃあ、帰ったらすぐに逢いに行くから、してくれる?』
「…1回だけですよ?」
『……そっか』
「い、いえっ…あの…ちが」
『わかってるよ。じゃあ…今日はありがとう』
「いいえっ、遅くまで…ありがとうございました。ゆっくり寝てくださいね」
『キョーコも』
「あの…は、はやく帰ってきてください…ね…」
『ん?何て?』
「………………は、はやく帰ってきてくださいって言ったんですっ。もー、何回も言わせないでくださいっ」
『ははは…ごめん、ありがとう。朝、また電話するよ。忙しくなかったら、出て?』
「はい、大丈夫です」
『キョーコ』
「はい?」
『愛してるよ』
「…は、はい…わ、私も…」
『ん、じゃあ、おやすみ』
「おやすみなさい…」
2007/02/09 OUT