さいっこうに、しあわせ…! -KYOKO

From -LOVERS

「5、4、3、2、1…おたんじょうび、おめでとうございま…」
「ん」

10秒前からカウントダウン。
2人で一緒に迎えた2月10日の、2秒過ぎに
お祝いの言葉の最後が敦賀さんに盗られてしまった。
彼の中に入っていったのなら…まあいいんだけど。

唇を離して、もう一度顔を寄せて目を閉じたら
敦賀さんの唇が私の額に触れた。
そうやって少しだけ、言葉のいらないコミュニケーションをとる。
言葉もすごく大切。
でもそれと同じくらい、言葉を使わずに意思疎通を図ろうとするのも大事だと、思う。
何も言わなくても、どこかが触れていたら言葉の代わりにきちんと伝わるんじゃないかと、
私は勝手に想像しているのだけど…どうかしら。
もちろん、伝えたい、っていう強い想いも必要だけど。

1年365日、一緒にいられたら、って想像する。一緒にいたいな、って考えたりする。
それくらいこの人が好きで仕方がない。
いつ逢ってもそのたびに前よりもっと好きになっていくのだから、
四六時中そばにいたってそうなのよね、きっと。

敦賀さんと過ごす時間はいつだってとても普通でとても特別。
そう思うのに、なんでなのかしら。
今日、一緒にいることがとても嬉しくて幸せで、
今、この時間をゆっくりと紡いでいく敦賀さんを、どうしても独占したい、って
考えてしまうのは。

「それにしても…よくわかりましたね」
「ああ…多分、同じこと考えてたから、だろうね」

お誕生日の予定を聞こうとして、私が最後まで言わないうちに、
「大丈夫、今年は空けてあるから」っていう言葉をもらってちょっとびっくりしたの。
盛大にお祝いするのが常だから、本当は内心無理かな、なんて思ってたし。

2人きりで過ごせたらいいのに、なんて。

とっくにわかってたことだけど、私は結構独占欲が強いみたい。
敦賀さんがいろんな人からプレゼントをもらうのはよくても、
当日、一番最初に直接「おめでとう」って言うのは譲れない、とかね。

「一番最初にキョーコからおめでとうって言ってもらえるのはすごく、嬉しいんだよ」

テレパシーでも飛ばしちゃったのかしらと思うくらいのタイミング。
読まれてる、なあ…。
ねえ、敦賀さん。

「…まさか、当日にこんなことができるなんて、思ってもみなかった」
「何年かに一度くらいは、ワガママも許してもらわないとね。何より俺の、誕生日なんだし」

じゃあ、今年はすっごく贅沢してるんだ。
だって私もそれに合わせてお休みをもらえてるし、敦賀さんのお休みも今日だけじゃないし。
そしてここは、絶対に他の邪魔が入る余地もないところ。

「両親に顔を見せたい、って言ったから…ですか?」
「んー…まあ、それも少しはあるかもしれないけど」

私の言葉に、敦賀さんがちょっと照れくさそうな表情を見せた。
男の人、だもんね。
普通はそういうこと言ったりしないだろうから、気持ちはわからないでもないけど
この場合は、かなりのレアケースだし、それも十分にアリ、よね。
そして、敦賀さんのご両親も、それはそれは嬉しいと、思うのよ?
あと、社長さんも、もちろんのこと。

「それなのに…こんなことしてていいのかな」
「大丈夫。似たようなことしてるよ、きっと」

日付が変わる前の日、
1日早く盛大に息子のバースデーパーティをした敦賀さんのご両親は、
少し前に2人でどこかへお出かけしてしまった。
見送った時に、先生…敦賀さんのお父様が、何やら敦賀さんに耳打ちをして
敦賀さんがちょっと慌ててたのは、つまりはこういうことだった、というわけで…
2月11日まで、ずーっと、ここで2人っきり。

こんな風にべたべたしながら2人で過ごすのが、敦賀さんの実家だなんて、
いろんな気持ちが混ざって実はちょっと複雑でもあるんだけど
ちゃんと許されてる、っていうのも理解できてそれはすごく嬉しい。
えへへ。
思いっきり2人でくっついてた後は、いろんなお話、聞かせてね。
まだ知らないあなたのこと、たーくさん。

大切な人のお誕生日、ってだけでも嬉しくて、結構テンションが上がるのに、
実は敦賀さんと考えてることが同じで、結果自分の思いどおりにできて、
何より、お誕生日の敦賀さんを正真正銘ひとりじめできて…

あー…

さいっこうに、しあわせ…!


2011/02/09 OUT
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