ふつう。…After KYOKO side -REN

From -LOVERS

彼女は謝って欲しいんじゃないと思う。
それは、俺にだってわかってる。

ただ、事実を言っているだけで。

電話を切った後、なんだか不思議な気持ちになる。
謝って欲しいんじゃないんだと知っていながら謝ってしまう俺を、彼女はどう思ってるんだろう。

逢いたいときに逢えなかったり、
そばにいたいと思うときに、そうすることもできない。
それを自分のせいだと思って、それで謝って。
どこかで「普通」じゃない自分に引け目を感じていた。
さっき電話で彼女が言ってたことは、俺がいつも考えてしまうことだ。

手を繋いで。
外を普通に2人で歩いて。
話をしながら、時には街中でこっそりキスをしてみたり。

それが出来たらどんなに楽しいだろう。
こんな仕事をしているせいで。
そう思って、謝ってしまう。
「普通」じゃない関係に感じてる引け目を埋めたくて。
君はそんな俺に、優しく笑いかけてくれる。

「そんなの、敦賀さんのせいじゃないんだから、謝らないで?」…と。

逢えない日は電話で繋がることだってできる。
君の温度も息遣いも、手に取るようにわかるけれど
でもやっぱり、空気に、距離に隔たれていて。

今日はどうだった?体調は大丈夫?明日の仕事はどこで?

逢いたい、と言う代わりに、そんな言葉を彼女に届けるだけが精一杯。
いつだって俺の中には、君への想いがあふれるほど。
それを君の身体に送り込まないと消化不良を起こしてしまいそうなくらいだ。

それが、今の仕事じゃなければもっと簡単に叶えられるんだろうかと
夢にもならない空想を思い描いてしまう。

例えば同じ会社。
年が違うから、もしかしたら君の上司として働いて、夜は恋人で。
それだったら今とあまり変わらないかな。
例えば知り合いの紹介で出逢ったなら。
これだと…あまり周りの目を気にしなくてもいいかもしれないね。
電話番号やメールアドレスを交換して、デートに誘って、
君の反応を見ながら少しずつ進めて行って…そして君は俺を選んでくれるだろうか。

そんなことを考えてる自分が少しおかしくもあった。
でも、俺は多分、君がどんなことをしていてもきっと見つけ出せると思う。
やっぱり君じゃなきゃダメなんだ。
そうだとしたら、仕事なんか別になんだって関係ない。
ただ、たまたま俺が芸能界にいて、君がそこに飛び込んできて。それだけの話なんだから。
どんな立場にあっても、君がいたら俺はそれだけでいい。
例え職業が芸能界での仕事じゃなくたって、
君との時間より優先させなきゃいけないことはきっと山ほどあるんだろうから。

だからこそ、今度逢うときには、
ただ一緒に過ごすだけでどれほど俺が幸せに思ってるかをきちんと伝えたい。
君にもう一度めぐり逢えた。そして君の隣にいられる権利を得て、君を手に入れて。
それだけで俺は、世界で一番幸せなんだよ、と。

彼女と出逢ってから…恋人になってから、
自分の中にあるたくさんの感情に気付かされてきた。
その、ひとつひとつがとても大切なものに思える。

それを俺に気付かせてくれるのが君で…本当に、良かった。
君に「逢いたい」と言ってもらえる俺でいることができて…良かった。

逢いに行くよ。

終わってしまった会話の余韻が惜しくて、携帯電話を握り締めた。
だからちょっとだけ、待ってて。
すぐに逢いにいけないのは仕方がないけどやっぱり少しは俺のせいもあるだろうから…
また謝ってしまうかもしれない。
でも君は優しいからきっとまた、笑って許してくれる。

早く、逢いたい。



2006/03/08 OUT
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