自分の身体のあたたかいところとそうでないところの差が激しい。
すっごく寒い、ってわけじゃないから、あたたかい、というよりも少し暑い。
そんな感じ。
毛布をかけてる部分と、毛布がない部分。そういう差、かな。
ちょっと重たいのが、普通の毛布とは違うところ。
…ちょっとどころじゃないかも。結構重たい。
重たくて、あったかくて、すべすべしてて、自分の意志で好きなように動く。
「んー…」
そうそう。声も出す、わよね。そういう、トクベツな、毛布…じゃないか。うふふ。
敦賀さんと私が重なってるところはとってもあたたかい。
だから、そうではないところの心もとなさを、より強く感じられるのかもしれない。
2人でベッドで過ごす時間を持つようになって、自分以外のあったかいものが隣にいたり
上にいたりするのが、最初はすごく変、というか、すごく特別というか
すごくドキドキすることだった。
普段はありえないことが、そのシチュエーションを際立たせてた。
何度そうなったのか、もう数もわからないくらいに一緒に夜を過ごしていくうちに自然なことになって、
恥ずかしい、だけだった気持ちがちょっとずつ違うものに変化してた。
「もう寝てる?」
「ん、まだ起きてますよ」
上から聞こえてきた声が私の周りの空気を優しく揺らす。
敦賀さんの顔に手を伸ばすと、逆に敦賀さんが私の頭を抱きしめた。
なんで、こんなに近くにいるのがドキドキよりも安心になったんだろう。不思議。
不思議…というより、ないと不安、かも。
そういうのってあったわよね。
いつも同じ毛布がないと安心できない、っていう話。
実は私もそうなのかな。
敦賀さんがいて当たり前、からちょっと進んで、敦賀さんがいてくれなきゃ不安。
すべすべした手触りとか、かぶさる重たい感じとかあったかさとか、
触れたときの感触とか。
名前を呼んでくれるその声とか、好き、とか、愛してる、とか、かわいいよ、とか。
そんなことをささやくときの敦賀さん全体からただよう色香、と…か。
「どした?」
急に話しかけられて思い切りびっくりする。
敦賀さんのほうをこっそり見ると、何かに気づいた様子で嬉しそうに私の額に唇を押し当てた。
「何か楽しそうなこと、考えてた?」
「う、ううん、別に、なにも」
だって、なんて言えばいいの…っ。
「ふーん?」
いぶかしげにそう言ってから、まあいいか、と続けた敦賀さんの唇が
私の唇にいつものように触れた。
キスをしている唇だけじゃなくて、身体ごと包み込まれてる感じがもう、毛布みたい。
自分を無機物に例えられたら面白くないかな。
だって最近の私ときたらあらゆる物を見て敦賀さんを思い出す。
敦賀さんが使っているものとおなじ物を見て、なんていうのは初期段階で
今ぼんやり思ってた毛布なんて、共通項は何もないんだものね。
だからそのたびに私は自分の敦賀さんへの気持ちがどれくらいなのかを思い知る。
敦賀さんのことが…ほんっとに好きなんだなあ、って。
「ん、」
私の安心毛布は…そこにあれば安心、だけじゃなくて
ドキドキもときめきも、知り得る全ての感情を私に教えてくれる存在、なのよね。
だ、だってほら、普通の毛布はそ、そんなとこ触らないし…っ
2011/06/19 OUT