恋人はサンタクロース? -KYOKO

From -LOVERS

なんでこんなことになってしまったのか、よくわからないでいる。
とりあえずここは、社長さんのお家(というにはあまりに広すぎるのだけど)で、
マリアちゃんのバースデーパーティをやって、日付が変わって私のも少しやってもらって
時間が遅くなるからといって早めに解散して、片づけをしようとしたら止められて
それじゃあ、と帰る用意をしていたら後ろから伸びてきた腕につかまって…
そして私は今、前にも言ったとおり社長さんのお家のたくさんあるお部屋の中のひとつにいる。
敦賀さんと一緒に。

「どうだった?」

頬が少し紅潮している敦賀さんが、息をつかせながら私にそう聞く。
笑顔にとろけてしまいそうになるけれど、ここでいつもみたいになし崩しになると悪しき前例を生むような気がして、
この人もちょっとは思い知ったほうがいいんだわとか、思ったりもするのに、やっぱりダメ。
ちょっとだけ憤慨しているのは事実だけど、なんというか…そういうのもみんな含めて
この人のことを好きでいるってことは要するにこういうことなんだ…って悟った部分も、あるの。
そもそも悪しき前例なんてもう、掃いて捨てるほどあるんだから、今更言っても…な訳で。

「見てわかりませんか…っ」

それでも少し敦賀さんにわからせてやろうと思ってそんな風に言葉を返すと、
敦賀さんは、嬉しそうに笑ったまま私にキスをする。
それが唇だけでは済まなくなりそうだったので、されるがままになりながら目を閉じた。
身体がほんの少し動くだけで、下の方で繋がったところがこすれてその度に熱い。
さっきまでの嵐の名残をたくさん残したままだから、ほんとは考えもあんまりまとまらないの。
敦賀さんは本当に、こういうのが好きなのね…。

「キョーコのことが、好きなんだよ?」
「え?」
「…ごめんね、我慢が効かなくて」

私の呟きが敦賀さんに届いたのかどうか、そんなことを言いながら敦賀さんは私を抱きしめる。
うん、そんなの…わかってるもん。
セックスをしたい、んじゃなくて、私としたいって思ってくれてるのも、
ここしばらく満足に逢えなかったっていう理由があるんだろうな、っていうのも、みんなわかってる。
だってほんとは…私も…そうだから。

「もう変なヤキモチ妬いたりしないでくださいねっ」
「うーん…」
「じゃあもう敦賀さんとはこんなことしないっ…だいたいここがどこだかわ」
「わかった、わかってる。もうしない…と思う」

敦賀さんがバツが悪そうに微笑む。
さっきのごめんね、には、いま私が敦賀さんにまくし立てたすべてのことが込められているのを
ちゃんと知ってる私も、敦賀さんにぎゅっと抱きついた。
鎖骨の上でネックレスがしゃらり、と音を立てて揺れる。
敦賀さんと私の肌の間でネックレスを飾るチャームが冷たく存在感を訴えていて、
その冷たさに、私は今日こうして敦賀さんと一緒にいられることの幸福を噛み締める。

「今年は負けたくないって、思ったんだ」
「勝つも負けるもないじゃない…」
「まあ、そうだけど…やっぱり最初に言う権利は、持っておきたいなって」

この部屋へ連れてこられて、すぐに事に至ったわけじゃあなくて、
最初は自分の荷物の中から、プレゼントしてもらったものを確かめてた。
その間に敦賀さんが、今日はここへ泊まるからとお酒を用意してて、
私が、モー子さんからもらったばかりのものをしげしげと眺めてたら、
琴南さんにはいつまでも勝てそうにないかな、と言って敦賀さんに後ろから囁かれて
そういうのに弱い私が抵抗しようと思っても、残念ながら諸般の事情で敵うわけもなくて、
その後はなんというか、手っ取り早く言うと2人でベッドになだれ込んだ、という体たらくで…。
敦賀さんとモー子さんは全然別なのに、と言ったら、じゃあ俺のプレゼントも見て欲しいな、と、
少しだけ恨めしそうに呟くものだから、一番最初に見た敦賀さんからのプレゼントをもう一度見てみたの。
最初に見たんですよ、と言いながら取り出したら、敦賀さんがそれを私の首にかけてくれた。
それがこのネックレス。
で、敦賀さんがもうひとつラッピングされたものを取り出した。
何かと思ってみたら…

「いい子にしてたから、サンタさんが来てくれた、のかな」
「も…自分でそうしたんじゃないですか…」
「だって君は俺のサンタクロースみたいなものだから」

私にしてみたら、敦賀さんがサンタさんみたいなものなんだけど。
それに、私をサンタに仕立てたのは、敦賀さんなのにね。
…そう。
今の私の格好ときたら、サンタクロースばりの赤い服を着てるんだもの。
と言ってもコレ…服…かしらね?
肩紐はすでに意味を成してはいないし、裾は胸までまくりあげられたまま。
おそろいのショーツはとっくにベッドの下だし…あとはもうご想像におまかせします。
敦賀さんの2つめのプレゼントはサンタコスチューム風の下着セット。
モー子さんに嫉妬した敦賀さんが私を言いくるめて無理矢理着せたの。
普段ならやらないんだからね、こんなこと。
それは今日が特別…だから、なんですからね、敦賀さん。

「…誕生日、おめでとう」
「…ありがとうございます」

もう、何度言われただろう。
25日になってまだ数時間だけど、なんだかもう、数え切れないくらい、言われてる気がする。
今日は私のお誕生日。
生まれたことの意味を悪いほうに考えたことは何度もあるけれど、
いいほうに考えるようになったのは、多分、この人がいてくれたから、だと思う。
生まれてきたから、敦賀さんに逢えた。
敦賀さんに逢うために、今までのことがあったんだ、って…
そう思えるようになってからは…自分の誕生日がもっと大切なものになった。
生まれてきて良かった、って心の底から思えるの。
私も、敦賀さんのお誕生日には、生まれてきてくれてありがとう、って思うもの。
敦賀さんも同じなのかな、って思ったら、モー子さんに妬くヤキモチも可愛いかも、なんて。

「だから、モー子さんは大切なお友達で、敦賀さんは大切な…」
「ん?」

もう、わかってるくせに!


2008/12/25 OUT
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