後ろから -KYOKO

From -LOVERS

いつも2人で同じベッドで眠るときは、敦賀さんに後ろから抱きしめられてることが多い。
つまり、同じ方向を向いて眠る。
そうすると私の視界に敦賀さんが入ることはなくて、
代わりに後ろからの存在感はとてつもないものになる。
顔が見られなくても、後ろから包まれてる感じはすごく好きだし、
顔が見えること以外のすべてが伝わってくるような気が、してくる。
でも、こうしてたまにいつもの反対になったりすると、
途端にいつもとは違うものが見えてきて、新鮮な気持ち。
今日、今、まさに、そんな感じなの。

向こうを向いてる敦賀さんがどんな顔なのかはわからないけれど、
寝息から察するにすやすやと眠ってるから、きっと穏やかな表情なんだと思う。
ブランケットからはみ出ている腕に手を添えて、もう少しだけ敦賀さんに近づいてみた。
元々近かったのがさらに近くなって、ぴったり、になる。
頭を敦賀さんのそれに寄せてみると、柔らかいものが鼻先をくすぐる。
うなじに唇を押し当てて、ダイレクトに彼の体温を受け取ると、
ついでに自分と同じ種類のほのかな香りが私を包んで、それがすごく嬉しい。
…今日は一緒にお風呂に入ったし、そ、そういうことになってしまって
実は思い出すのも恥ずかしいんだけど、同じところで過ごしたり
シャンプーやタオルを共有したりすることは、とても幸せなことに思える。

敦賀さんとこういう風な関係でいられること自体がすごく大きな幸せ。
そして、そんな大きな幸せの中に小さな無数の幸せもいっぱい詰まってる。
自分が自分でいることを、こんなにも幸せに思える日がくるなんて、
考えてみたらものすごい奇跡のような気がする。
敦賀さんのことが好きな気持ちを、ただ素直に心の中に置いておける。
自分の想いをきちんと大切にすることができる。
うん…それは、敦賀さん、だからなのよね。

敦賀さんの髪を、見ているだけではいられなくなって、そっと指を差し入れてみる。
私は敦賀さんに同じことをされると思わずゾクゾクきちゃうほうだけど、
敦賀さんはどうなんだろう。
起こしちゃったりしないかな。
そんなことを考えながら、でもやめられない。

頭の中をのぞくことができたら、どんな感じなのかしら。
あ、別にのぞいてみたいってわけじゃあ、ないの。
その目線に射られずにこうやってじーっと敦賀さんの頭を見てるってことが
滅多にないから、なおさら、この頭の中にはどんなことが隠れてるのかな、って。
少しくらいわからないほうが、多分いいのよね。
考えてることがみんな筒抜けだとマズいもの。
私だって、考えてることがみーんな敦賀さんの知るところとなったら
それはそれですっごく恥ずかしいわよ?
だって今、こんなこと考えてるっていうのも、みんなバレちゃう。

考えても永遠にわからないことを、こっそり想像するのがいいのかもしれない。
それに、とりあえずごく近いところにいられるんだし、
敦賀さんの考えてることで、私がわかってることも、ちゃあんとあるの。
それはとても、喜ぶべきこと。

はあ…飽きないなあ…。
起きてるときはほぼ完璧超人と言っていいくらいなのに、
こうやって眠ってると…特にそれを後ろから見てると
スキだらけなんだもの…!
あー…かわいいなあ、ほんとに。

おっと、訂正しておかなくっちゃ。
起きてるときでもスキだらけなことは、結構あるのよ?
他の人は、あんまり知らないだろうけれど。


2013/08/28 OUT
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